2010年12月16日〜30日
12月16日 直人 〔わんごはん〕

 クリスマスが来ますね。

 うちのご主人様はクリスマスなんてスルーですが、ぼくはクリスマス料理も大好きです。

 今年はケーキ焼いて、ターキー焼いて、あまったらターキーサンドにして、なんてウキウキ考えてました。

 しかし、なんということでしょう。今年はご主人様が帰ってくると連絡してきたのです。

「そうですか……」

 微妙な気分が返事に出てしまいました。ご主人様は

「なんだ。浮気でもしているのか」

「浮気はしてませんけれども」

 ケーキが……。


12月17日 セイレーン 〔わんごはん〕

 クリスマスが近いので、ぼくは料理の本をまた買ってしまいましたよ。

 日本ではクリスマスにはケーキを食べるんですって?
 がんばっちゃいます。

 でも、ご主人様はノリが悪いです。

「ケーキはもういいよ。冷蔵庫にもまだあるし」

 何を言っているのです。冷蔵庫のあれはただのパンケーキです。この間、作ってあまったのを凍らせてあるものです。

 あれも早く食べてもらいたいものです。今まだ冷凍庫の半分ぐらい占めています。


12月18日 フィル 〔調教ゲーム〕

 プレゼントのことで頭を痛めています。

 じつは、今年こそアルバイトで資金を作ろうとしたのですが、期間中、体調をくずしてほとんど出られなかったのです。
 また知恵をしぼらねばなりません。

 そんな折、エリックがわたしの部屋を訪ねてきました。こいつはまた、はた迷惑なお菓子のプレゼントに挑戦しているようです。

「買えるものなら、彼は自分で買える。おれが贈る意味ないから」

 菓子なのだそうです。菓子でなくてもいいような気がするけど。

 わたしは、ひとつ提案をもちかけました。


12月19日 ジル  〔不貞〕

 アンディにも困ったものだ。

 やつはクリスマスに旦那が帰ってくるものだと思っている。もみの木の下にプレゼントの包みを並べ、皆でクリスマス・ディナーを食べるのを楽しみにしているのだ。

 ディナーぐらいは作ってやれるが、旦那がクリスマスに戻るはずがない。クリスマスに戻るのは東洋人かアラブ人かよほどの犬バカだ。

 そう言っているのだが、「ご主人様は独身だ。一日ぐらい戻るよ」とへんに頑ななのだ。

 言うと、部屋に逃げてしまう。弟や妹を思い出して、いやになっちまう。


12月20日 ジョシュ 〔犬・未出〕

 もうすぐご主人様が帰ってきます。

 ぼくはプレゼントにアロマセットを買いました。ご主人様はにおいに敏感なので、きっと楽しめると思います。

 CFでもオイルマッサージの講習を受けています。足の裏のマッサージは最高。講師にやってもらったら、セックスしているような声が出てしまいました。(笑)

 ご主人様がアメリカから帰ってきたらマッサージしてあげるのです。今からその時のことを思うとウキウキします。


12月21日 ランディ 〔犬・未出〕

 バイトしたお金で、健康フリークご主人様にお菓子の長靴を買いました。

 ジャンクなお菓子がたっぷり詰まっています。

 ご主人様だって子どもの頃はマクロビ好きじゃなかったはずなのです。クリスマスぐらい、楽しいもの、健康によくないけど愉快なものを食べてもいいと思う。

 でも、一番下には砂糖とミルクを使わないお菓子も少しだけ入れておきました。押し付けはなんでもよくないからね。
 おれって大人だなあ。

 あまったお金でおれにも長靴買っておこう。


12月22日 ジャック 〔バー・コルヴス〕

 いよいよクリスマスですね。
 スタッフの間にはいやな緊張がたちこめています。

 しかし、さびしがるのは犬だけじゃないようです。クリスマス、地下に入り浸るご主人様もいらっしゃるんですよ。

 犬をお飼いでない方、ご家庭をもたれない方やクリスマス騒ぎがお好きでない方。だいたいおひとりで遊んでいらっしゃる方ばかりですね。地下は一年中、独身者のパーティーのようなものですから。

 でも、たまに犬を飼っているのに、クリスマスにやってくる方もいます。
 犬が里帰り中なんですと。


12月23日 ジャコモ 〔犬・未出〕

 明日はイブだ。おれはパーティーにいく。

 パーティーで楽しく飲み食いして、ゲームして、ダンスを踊ってにぎやかにやってくる。

 旦那には花を贈った。花なんか好きかどうかわからないけど、給料分全部バラを贈った。

 家令はどこに届けるんだろう。やっぱりあの小僧の家かな。
 あの小僧は腹をたてるかもしれないな。おれのバラを捨てちまうかも。

 でも、おれはバラを贈る。明日はパーティーでにぎやかにやる。


12月24日 

クリスマス特別企画 イヴ編

12月25日 

クリスマス特別企画 当日編

12月26日 ロニー 〔犬・未出〕

 クリスマス、おれは主人に許可をもらい、イギリスに帰っていた。

 二週間の予定だったが、耐えられずに帰ってきてしまった。
 ご主人様はおどろいた。

「ベイビー。どうしたんだい。こんなに早く」

 おれはご主人様に抱きついて、泣いてしまった。
 彼はおれにココアを淹れてくれた。

 さびしくて、冷たい泥のようだった気持ちが熱いココアで溶けて流れた。ご主人様はおれの肩を抱き、

「帰ってきてくれてありがとう」

 と言った。
 おれは泣きながらうなずいた。
 自殺しないでよかった。


12月27日 ロニー 〔犬・未出〕

 去年帰った時、娘のジェニーはおれのひざから離れなかった。帰る時にはわんわん泣いたものだ。

 今年、彼女には新しいパパがいた。彼は紳士的におれを家に入れてくれたが、彼の女房はあきらかに迷惑がっていた。

 そして、ジェニーはおれを忘れていた。

 がっかりして、家に帰ったら、両親は旅行に出ていた。兄夫婦が泊めてくれたが、人の家のクリスマスにいても、さびしいだけだ。

 連隊の仲間は家族と過ごしているか、任務に出ていた。おれには二週間もいるところなんかなかったんだ。


12月28日 ロニー 〔犬・未出〕

 ご主人様はおれに風呂に入るように勧めた。シャワーでなく、少し熱めの風呂にじっと浸かっているように言った。

 出てくると、グロッグを作ってくれた。

「これは酒じゃない。薬だからな」

 と片目をつぶって、飲ませてくれた。

 おれは彼に抱かれたくてしかたなかったが、グロッグを飲むとにわかに眠くなってそのまま寝てしまった。

 ドムスのベッドは清潔でリネンはいいにおいだ。毛布はやわらかであたたかい。

 そしてご主人様がいる。
 おれは宿無しじゃなかった。


12月29日 ジャコモ 〔犬・未出〕

 クリスマスに旦那がおれのもとに帰ってきてうれしい。

 でも、彼がずっとおれのほうにいるつもりだとわかって戸惑った。

 あいつは? 
 あの地下から旦那に助けられた小僧は?

「手放そうと思う」

 彼は言った。

「ふたつもドムスを持つのはわたしには分が過ぎる」

 おれは旦那を見つめた。彼の甲斐性なら、ドムスの三つや四つ問題ないはずだ。

 彼はおれに聞いているのだ。あの小僧を飼ってもいいか。二匹仲良くしてくれるか。おれは言った。

「飼いなさいよ。おれも忘れないでくれるなら、いいですよ」


12月30日 ジャコモ 〔犬・未出〕


「こっちのほうが広い! キッチンもでかい」

 マリオンがおれのドムスに移ってきた。トレーニングマシーンをたくさん運び込んで。

「おれ、ジムのインストラクターだったの」

 彼は屈託なく笑った。

 奴はクリスマスのことは何も言わない。だけど、奴が旦那をおれのとこにやったんじゃないかと思う。そんな気がする。

 やつは言った。

「リンチの後、やつらの気持ちはわかったよ。ショップでいつも売られていくやつを妬んでたからね」

 まあいいさ。おれは筋トレの仕方を教わることにしよう。


12月31日 直人 〔わんごはん〕

 ご主人様はクリスマスの夜、帰られました。

 ぎゅっと肩をつかんで「正月さびしい思いをさせてすまんな」と言い置いて、玄関から出ていかれました。

 アクの強い方なので、いなくなると部屋が広いです。ちょっとせつない気分ですね。

 お蕎麦を打ってもひとりで食べるのはさびしい。

 でも、今日は日本からクール便がどさっとやってきました。

 うすべったい箱に入った福井県の水羊羹が何箱も詰まっています。
 メッセージには

「テレビ見る時にお食べ。でも、おれにも少し残しておけ。松の内に戻る」


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